ディスレクシアの児童・生徒の読み書きを支援する際、私たちにどういった支援が出来るのでしょうか。ここでは、ごく基本的で簡単な読み書きの支援方法を紹介します。

 

「読む」ことを支援する場合は・・・

① 漢字に振り仮名を入れる

最も基本的な方法ですが、ディスレクシアの人は、平仮名・カタカナは読めても、漢字を読むのは難しいと感じることが少なくありません。漢字に振り仮名を入れるだけで読みにくさが改善されるので、ディスレクシアの人の読み書きの支援にはとても有効です。

 

(例1)漢字に振り仮名を入れた文

② スラッシュを入れる

 文や文章を読むときに、「ひとかたまりの言葉」のところでスラッシュを入れたり、「漢字+ひらがなのペア」を探して、助詞のところでスラッシュを入れて一区切りさせると、ディスレクシアの人には読みやすくなります。上記の振り仮名を入れて組み合わせると、更に有効です。

 

(例2)振り仮名とスラッシュを入れた文

③ 読みやすい大きさの字と行間にする

これは、ディスレクシアの人に限った話ではありませんが、文字が小さかったり、行間が狭かったりすると、文字がくっついて見えるようになり、文が読みづらくなってしまいます。教科書や資料などを読む際に、どれくらいの大きさの文字が読みやすいか、行間はどれくらいあいていると読みやすいかを、予め知っておくと支援もしやすくなります(例4参照)。また文字の拡大や行間の設定が難しい場合は、教材をコピーして、文の下に下線を引いてあげるだけでも読みやすくなります(例5参照)。前述の振り仮名とスラッシュを入れることも出来れば、更に読みやすくなるのは言うまでもありません。

(例3)字が小さく、行間が狭い文章

(例4)字を大きくし、行間を広くした文章

(例5)下線を引いた文章

④ 読みやすい字体にする

これも、ディスレクシアの人に限った話ではありませんが、人にはそれぞれ自分にとって読みやすい字体があるとされ、とりわけディスレクシアの人には、「ゴシック体」や「ナール体」など太さが同じ書体が読みやすいとされる。Officeなどで教材や資料を作成する場合は、字体を自由に変えることが出来るので、その人の読みやすい字体を予め知った上で、教材を作り支援することが出来ます。

 

例6)明朝体とゴシック体を比較した文

⑤ 読みやすい文字の方向にする

ディスレクシアの人の中には、横書きのほうが読みやすいという人が少なくないとされます。ディスレクシアの人が、横書き・縦書きのどちらの方が読みやすいかを知っておけば、教材を作る際や使用する教材を考える際にも工夫が出来ます。

 

 実際に、どちらが読みやすいか、読み比べてみてください。

 

(例7)「縦書き」の桃太郎と「横書き」の桃太郎

⑥ モノクロコピーをして、蛍光ペンを使う

学校で使用される教科書や資料は、色が多すぎるので、ディスレクシアの人には読みにくい場合がある。この場合は、モノクロコピーをして、大事な点だと強調されているところに蛍光ペンで印をつけるなどすると、読みやすくなります。

書くことを支援する場合・・・

① ペングリップを使う
写真1
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鉛筆に装着するゴム製のグリップを用いることで、鉛筆を正しく持てるようになり、ディスレクシアの人にとっては、少しでも字が書きやすくなる場合がある。持ちやすさを視野に入れたボールペンやシャープペンシルなどは巷で発売されているので、筆圧が強すぎてうまく書けなかったり、筆圧が弱すぎて書けない場合は、有効な支援方法になります。

 

(写真1)持ち方矯正グリップ

http://www.joyvision.biz/item001.html

 

 


写真2
写真2

(写真2)PILOT ドクターグリップシリーズ

http://www.pilot.co.jp/products/pen/drgrip/index.html

 

 

 


② 芯の柔らかい鉛筆を用いる

 鉛筆の芯は、硬ければ硬いほど筆圧の調整が難しくなり、書きづらくなってしまいます。HBなどの鉛筆よりは、2Bや3Bなどの芯の柔らかい鉛筆を用いると、書きやすくなる場合があります。


③ 使いやすいノートを選ぶ

これは、ディスレクシアの人に限った話ではないが、真っ白なノートや自由帳に書くよりも、罫線やマス目のあるノートの方が、文字や文、文章は書きやすくなる。巷に販売されているノートは、罫線の太さやマス目の大きさなど様々な物があるので、その人にとっての書きやすいノートを選んでみると有効な支援になります。

 

 


いかがでしょうか?ここまで紹介してきた方法を、支援する際にいきなり全て使うことは無理がありますし、また、その人が全て必要としているとも限りません。大事なことは、その人の特性を十分に理解した上で、適切な支援方法を検討することです。

 

では次に、読み書きを支援する上での、身近にある「道具」を紹介していきます。

 

① 電子辞書・DS・PC・スマートフォン・タブレットの辞書機能

 最近の電子辞書は、読めない漢字をパッドで書いて調べたり、日本語の読み上げ機能がついているものも多くあり、読み書き支援には大変有効な道具であると言えます。

「ニュークイックショナリー2」という、本体先端のスキャナーで漢字や英単語をなぞるだけで瞬時に言葉の読みや意味が表示されるペン型電子辞書もあります。これを使えば、新聞や、雑誌、書籍、カタログなど、印刷物であれば、わからない漢字を調べることが出来ます。

ニュークイックショナリ-2

http://www.scanpen.jp/


また、ニンテンドーDS用の「楽引辞典」というソフトを使えば、調べたい漢字を書いてタッチすると、辞書機能に飛び、画面に意味と読みが表示されます。

 

ニンテンドーDS「楽引辞典」

http://www.nintendo.co.jp/ds/adjj/index.html

 


さらに、iPhoneiPad用の「大辞林」にもジャンプ機能があり、読めない漢字や意味のわからない単語を指でなぞれば、その言葉のページにジャンプするので、大変便利です。

書物書堂「大辞林」

http://www.monokakido.jp/iphone/daijirin.html

 


② 携帯電話・ICレコーダーの録音機能

 現代の携帯電話は、書くことが苦手な人にとっては、字の変換を初め、メモ代わりに録音したり、写真を撮ったり、大変便利な機能が備わっています。また、スケジュール管理やリマインダー機能は、短期記憶が苦手な場合にも応用できます。ICレコーダーは、USBを用いてパソコンにデータが転送可能であり、音声データとしての保存が可能です。

 

 

③ マルチメディアソフトDAISY

 DAISYとは、視覚障害者や読むことが苦手な人々の為に、デジタル録音図書の国際標準規格として、50カ国以上の会員団体で構成するデイジーコンソーシアムにより、開発と維持が行われている情報システムのことです。専用の機械やPCにソフトウェアをインストールして再生し、目次から読みたい章や節、任意のページに飛ぶことが出来たり、音声にテキストと画像をシンクロさせることが出来たりします。国内では、点字図書館や一部の公共図書館、ボランティアグループなどでDAISY録音図書が制作され、CD-ROMで貸し出しされており、最近では、教科書バリアフリー法の成立により、マルチメディアDAISY版教科書も作成可能になり、ボランティアグループを中心に製作が行われています。


マルチメディアDAISY図書

http://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/book/index.html



④ ポメラ

小型のワープロで、パソコンと違い、起動が速く、画面も見やすく、キーボードが大きいのが特徴です。作成したデータは付属のUSBでパソコンに転送可能であり、メモだけでなく漢字変換としても利用できます。

 

KING JIM 「ポメラ」

http://www.kingjim.co.jp/pomera/

 

 


 一つだけ注意点がございます。ここまで紹介してきた道具は、あくまで「補完機器」であって、これらの道具を用いれば、機能不全が完全になくなるわけではありません。勿論、「補完機器」を与えれば、読み書き指導の必要がなくなるということもありません。この「補完機器」と併せて、最初に紹介した「読み書きへの支援方法」が必要になるわけです。どういった支援方法と、どの道具・補完機能が、目の前にいるディスレクシアの人の読み書き支援に役立つかをしっかりと見極めた上で、適切な支援・道具を与えることが最も重要なことだと思います。

(参考文献・リンク)

 「怠けてなんかいない!セカンドシーズン あきらめない‐読む・書く・記憶するのが苦手なLDの人たちの学び方・働き方」 品川裕香著 岩崎書店

視機能トレーニングセンター JoyVision

http://www.joyvision.biz/

PILOT ドクターグリップシリーズ

http://www.pilot.co.jp/products/pen/drgrip/index.html

ニュークイックショナリ-2

http://www.scanpen.jp/

ニンテンドーDS「楽引辞典」

http://www.nintendo.co.jp/ds/adjj/index.html

書物書堂「大辞林」

http://www.monokakido.jp/iphone/daijirin.html

マルチメディアDAISY図書

http://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/book/index.html

KING JIM 「ポメラ」

http://www.kingjim.co.jp/pomera/