「音読」って、なんだろう?

音読は、ほとんどの英語の授業で取り入れられている活動です。
ですが、英語の音読がスラスラできる子はなかなかいません。それはなぜなのでしょうか

 

音読とは、様々な要素が含まれた活動です。
例えば次のようなことができていなければ、音読はできません。

 

  1. 文字と音を結びつける(文字素と音素が結びついている)
  2. 正しい音が発音できる(構音できる)
  3. 文字に沿って目がスムーズに動く(視機能が正常に働く)
  4. 文の区切りがわかる(文の構造が理解できる)

 

ではそれぞれができていない場合、どのように読んでしまうのでしょうか。
おそらく、このような感じでしょう。
 
本文 :The meeting will begin at three.
生徒「ざ、みー・・・、ういるぅ、べぎん?びぎん? あっと・・・ええーと、すりい。」
 
こういう読み方、多くありませんか? 
文脈にかかわらず一語一語で区切って読む、 それ以前に正確な発音がわからず何回も言い直す、読めずにつまる。
 
それを、「単語を知らないからだ」と一言で片付ける人がいます。
「単語を覚えていたら、読めるはずだ」。
 
では「単語を知っている」とはどういうこと指すのでしょうか。
 
言葉には、音があります。その音には、意味がくっついています。
そしてその音や意味を表す形、つまり文字があります。

「単語を知っている」とは、単に文字に意味が結びついた状態を指すだけではありません。読み書きにつなげるには、音との結びつきが欠かせないのです。

 

 

母国語を学ぶときは、まず「音」と「意味」が結びつきます。

たとえばお母さんが、「くるま」と言いながら、走っている自動車を指さす。

 

子どもは自動車を見ながら、母親の発した「く」「る」「ま」という音を認識します。

ですが、子どもによっては「くゆま」と聞こえているかもしれませんね。

 

子どもがお母さんの真似をしながら、「くゆま」と言ったとしましょう。

お母さんは、「そうね、くるまね。」と正しい音を繰り返します。

 

この母親が正しい音で繰り返すことで、子どもは自分の発した音と、

実際に聞こえた音の違いを意識し、正しい音を発するように発音の操作を試行錯誤しながら身につけていきます。

 

 

子「くぅま、くゆま・・・」

そして徐々に「くるま」と発音できるようになります。

 

この過程で、もし自分の発した音が、実際の音とは違ったままで固定化されるとどうなるでしょうか。

 

例えば「る」の音と「う」の音の”聞き分け”がうまく習得できておらず、

「くるま」を「くうま」と発音しているケースを考えましょう。

この子は、自動車の絵を見て、「くるま」と正しく書けるでしょうか?

 

おそらく、できないのではないでしょうか。「くうま」と書くと思いませんか。

 

でももし先生が、「Aちゃん、これは“くるま”だよ」と書きの間違いを訂正したら、

Aちゃんは、「くるま」と書くようになるでしょう。

 

しかしそれは、正しく聞こえているからではありません。

「くうま」は「くるま」と書く、という形を覚えただけで、

音があやふやなままだと、同じ音の入った他の語で、

同じ間違いをするのではないでしょうか。

 

 

これまで英語と国語を指導していて、読み書きの書きが苦手な子どもの中に、発音が不明瞭な子が多いように思います。(※もちろん読み書きの苦手な原因はこれだけではありません)

 

音が「聞こえている」ことと、音を「正確に認識している」ことは違うものです。

 

 

まずしっかりと「音」を捉えられるよう、聞こえてくる音と、自分の発する音の違いを意識させながら音と文字の対応関係を身につけることが必要ではないかと思います。

それが外国語であるなら、なおさらです。

 

 

少しだけ補足しますが、音がその言語の文字体系に合わせた音韻レベルで正確に認識できていないと「書く」「読む」ことがとても難しくなります。

 

スラスラと読み書きができるようになるためには、日本語であれば、拍(モーラ)レベルの聞き取りと発音、

 

英語であれば、音素レベルの聞き分けと発音ができなければいけないわけです。

このあたりは、音韻認識(phonological awareness)について調べるとすぐにいろいろな資料が見つかります。

 

日本語は、1文字1音対応ですし、モーラは音節に近い、比較的に大きな単位の音ですから、音の認識、発音の両方は簡単に身につきやすい言語と言えます。

 

ですが英語となると、一文字に対していくつもの発音があります。

また、モーラに比べると音素は最小の単位です。

そのため英語は、文字音対応に規則性のあるイタリア語やドイツ語に比べても、

読み書きの習得が最も難しい言語の1つだと言われています。

 

 

 

しかし日本のほとんどの通常の学校では、フォニックスのような体系的な音と文字の対応ルールを指導していません。

 

ですから、特に初期の日本人学習者は、”文字と音の対応による読み方”で読むのではなく、「漢字を覚えるときと同じように、機械的に暗記して単語と音を結びつけ」ようとします。

 

 

この覚え方の欠点は、「記憶力の良い子だけが単語を覚えられる」という点です。

 

本来は、音素と文字素の対応ルールを学んでいれば、

音の足し算をすることで新出単語を発音することができるのです。

 

ですが、文字音対応ができていない場合、丸覚えしかない。

 

ですが、視覚的な記憶力にも限界がありますから、

文字音対応を自然に習得できない子は音読ができないだけでなく、

単語数を増やして行くことができません。

 

日本人ですから普通は音素での聞き取りはもちろん、発音には慣れていません。

”認識できない音は正しく再生できない”の例は、

 

生徒にリスニングテープの後をリピートさせてみると良くわかりますね。

英語の音が聞こえてくると、日本人の生徒であれば、なんとか母語のモーラで認識し、発音しようとします。

 

聞こえてくる音と、自分が文字に対応させた音にギャップがあれば、聞こえた音を正しい意味に結びつけるのは至難の技でしょう・・・。

 

 たとえば、milkという音は、日本語の「ミルク」とは全然違います。

ですから、milkと聞いても、牛乳が思い浮かばない。音と意味が結びつかないのです。

 

「文字で見たら意味がわかるのに、聞いたら簡単な文章でも意味が全然わからない」のは、このことです。

 

ですから、英語を身につけたいのであれば、英語の音をしっかりとていねいに意識させ、発音していかなくては、文字に音が結びつかず、結果的に読み書きが身につかないのです。

 

日本の英語教育では、音をあまりにも軽視しすぎているため、母語のモーラで英語を聞こうとする段階から上達できないように思えます。

 

長々と書きましたが、音読のやり方を間違えて、”日本語のモーラ単位での発音”を定着させてしまうことは、リスニングで聞き取りができないようになっていくばかりでなく、いつまでたっても目で単語を覚えようとする(漢字のように形で覚える)、

 

ローマ字のように母音をくっつけて覚えるため正確なスペルが覚えられない、

新出単語を正確に発音できない、結果的に語彙量が増えない、という代償を払っているのではないかと思います。

 

英語学習の初期段階であればあるほど音読をさせる場合は教員がお手本として正確な音を提示し、発音の操作を指導した上で行うことが大切です。

 

実際は発音に関しては臨界期説などもあるので”早いほうが良い”という意見もあります。小学校英語で取り入れるなら、まずは音の聞き分け・再生が有効でしょうね・・・。

 

 

もう1つ、音読が難しい、たどたどしい生徒のなかに、文字に沿って目がスムーズに動かない、または文字の形を正確に捉えるのが難しい子がいます。

 

欧米ではオプトメトリストや作業療法士が検査やトレーニングをしていますが、日本では、学習の現場において、子どもの目の機能についてはほとんど意識されていませんし、知られていません。ですが、読むためには、文字の形を正確に捉えることが必要です。そして、目がスムーズに左から右へと移動できなければ、読まないといけない箇所ではないところを読んでしまうかもしれません。

 

この子は間違えるのは、この子が不注意なのではなく、目の機能に問題があるのかもしれないと気づき専門機関につなぐことができれば、

 

視機能に関してはトレーニングで大きく改善する可能性が知られています。

 

文責 村上 加代子