発達障害、学習障害の子どもたちへの指導に関しては、これまで指摘されてきているように、特性に合った適切な対応がされないために、自己否定感が強くなったり、周囲への反発が強くなり、不登校へとつながるというケースも少なくありません。

「適切な教育」というのが何か、「その子の特性に合った」とはどういうことか、これをひとつずつ理解し、実現していくのが現在の日本の教育現場の課題です。

最終的に判断するところ、つまりその指導が成功しているか否かの答えは、目の前の子どもの中にしかありません。

 

 

 

その子が笑顔でリラックスして学び活動を行っているか。

それを実現できていれば、成功だと思っています。

まず先生が変わると、子どもが必ず、驚くほど変わります。

それを信じて、子どもの立ち場に立った指導を心がけましょう。

 

 

 

学校(多人数)での指導で気をつけること

教室の指導では、多人数を同時に相手にするため、個人授業とは違う配慮が必要です。大きくは、以下の2点です。

 

  1. 教室の環境を整える

  2. 学習・指導方法に柔軟性を持たせる

 



1.教室の環境を整える

① 余計な音をコントロールする

崩壊寸前のクラスは、全体的にいつも、ざわざわとした感じです。子どもがピシっと集中してしーんとなる瞬間が少ない。いつも誰か(先生も含めて)声を上げている、音がなっている、物が動く音がする。

まず、極力、無駄な音を消しましょう。

これは、先生の怒鳴り声も含めます。

「○○くーん、△でしょう?早くこれやりなさい!」「●くん、何やってるの!?」

といった、叱責の声は、クラス全体に影響しています。

先生のいらだちや落ち着きのなさは、

そのまま、クラスの雰囲気になります。

先生の声が大きいほど、子どもの声も大きくなります。

 

 

もちろん先生が怖い声で脅すと、声は小さくなりますが、脅かしてばかりの教室に、したくないですよね。

発達障害の子どもたちは、そうでなくても環境にとても敏感です。 先生の感情にも柳の葉のように、ふらふら左右されてしまいます。

先生が落ち着いて、ゆったりと、子どもが安心できる居心地の良い気持ちでいればこそ、子どもが「ここは安心していいんだなあ」と、

緊張度が下がります。

この、落ち着いた、テンションの下がった状態をキープします。 (テンションを上げるときは上げるときで、ちゃんと区別します)

だからといって、くら~い雰囲気じゃなくて、”楽しくて、緊張度の低いクラス”という感じでしょうか。

(村上「崩れない教室」より抜粋http://blog.goo.ne.jp/itkayoko/e/82d31e6ab4f96c41970c03dc459130fa)

 

 


② 待たせない

不注意や多動のある子は、待つのが苦手です。

注意すべき活動の1つが、全員に同じ問題を配ってさせるプリント活動。

これは、早い子と遅い子で、終わる時間が違います。

早い子は終わると、手持ちぶさたになります。そして余計な活動(例えば隣の子にちょっかいを出したり、違う科目の何かをやり始める、携帯を触り始めるなど)に意識が行き、授業に戻ってくることができなくなります。

 

次に注意しなくてはいけないのは、先生が一人ずつ順番に生徒を回って指導していくやり方。

これも、順番を待ってる間にすることがなくなります。

 

この手持ち無沙汰状態を、ゼロにすることが目標です。 

待つ時間が長いほど、子どもの心がどこかに飛んで行ってしまい、

引き戻すのが大変!!ここにエネルギーをかけてはいられません。


早い子遅い子がいるのは当たり前です。

 

ならば、できるだけ遅い子を待ってあげましょう。

その間、早く終わった子が、取り組める課題を与えましょう。

 

それを、「見直ししなさい」だけではなくて、

 

「おっ、早く終わったね!
すごいやん。じゃあご褒美にこのパズルやってみる?

 どっちか選んで良いよ」

 

など、ちょっと楽しげな学習パズルや、その子の好きそうなプリントを

「ごほうび」として取り組ませる方法もあります。

そのときに、子どもは「自分で選ぶ」ほうがしっかりやります。

先生が、「終わった人は、次にこれをしなさい」

という場合と比べてみて下さい。(実際試してみて下さい。やる気が出る方の方法で進めれば良いです)

ほとんどの子どもは、自分で選んだプリントの方が、集中して取り組みます。

だから、選択させるのです。

(この、選択の大切さは自律学習にも欠かせません)

 

子どもが一度ざわつき始めたら、

静かにするまで、またとても時間がかかります。

これは、授業の進行の妨げになるだけでなく、先生にとっても無駄な労力です。

だから、ざわつかせない。待たせない。

先生が静かに落ち着いて話す。

そのための準備は大変ですが、授業が成功するためには欠かせません。

(村上「崩れない教室」に加筆修正。
http://blog.goo.ne.jp/itkayoko/e/82d31e6ab4f96c41970c03dc459130fa

 

 

 

 

2.学習・指導方法に柔軟性を持たせる

柔軟性というのは、「その子に合わせる」ためであり、決して「相手に折れる」とか「甘やかす」という目的ではありません。柔軟性のない授業は、結局は「子どもに合わせてもらっている」のであり、教師ではなく生徒に負担が大きいものです。

子どもに合わせる利点は数多くあります。

まず最も大切なことですが、学習がはかどります。

そして、落ち着くようになります。

 

「柔軟性」を具体的にはこういう場面で発揮できたら、と思います。

 

 ① 宿 題

量は、レベルは適切でしょうか。
その子の理解を促す、あるいは確認するための宿題ではなくて、ただこなすだけ、あるいは惰性の宿題になっていませんか。
宿題を個別に配慮することは、別に「ひいき」や「不平等」ではありません。当然するべき「合理的な配慮」です。

 ② テスト

センター試験では、読み書きその他環境への配慮が行われています。中、高校ならなおのこと、そうした支援を積極的に取り入れることで、子どもの勉強への姿勢や進学に大きく影響してくるはずです。

A 文字の拡大(基本です)

B

必要であれば漢字にルビ
C テストの時間延長(センター試験は1.3倍)
D 別室での試験(集中できます)
E 代読(ニュージーランドやアメリカなどでは一般的です)
F 配置が単純で明快な解答用紙(答えを書く場所を間違えたり、探すのに手間取って時間が足りなくなるのを避けるため)
G 前もって試験のスタイルを具体的に提示しておく
H 選択問題を増やし、記入する箇所を減らす
I 漢字を多少間違えても内容理解ができていれば点数を考慮する

 

 ③板書、ノート

これはすぐにでも考え、改善できることです。例えば子どもたちはこういうことで困っています。


例)
A
くん:書くのが非常に遅いため、黒板を写している間に授業がどんどん進行し、内容がまったく理解できないままである。

B
くん:同時に二つの物事に対処できないため、黒板を写しているときは、先生の説明が全く耳に入ってこない。そのため、授業内容が理解できず、指示に従うテンポも遅い。

C
くん:書き写すことが困難なため、一生懸命、一文字ずつ書き写している。しかし遅すぎるので、黒板を先生がどんどん消してしまい、ノートは完成できず、また、書きながら聞けないので、授業内容は頭に入っていない。

ここで気づいて欲しいのは、「書きながら聞く」ということができない子どもへの配慮が全くなされていない、ということです。

一番大切なのは、“黒板に書かれていることを写す”ことではないはず。

だとすれば、どんな工夫ができるでしょうか?

プリントを配布する、穴埋めにして授業進行しながら一緒に埋めていく、プロジェクターで授業を行い手元には同じ資料を配付する、などいくつも考えられると思います。

ほかには、授業の録音を許可する、板書した物をカメラで残すことを許可するなど、授業中は先生の話をしっかり聞くことに重点を置いた配慮も可能です。こうした例はすでに他の学校や、欧米では行われています。

 

 ④読み書きへの配慮

学習障害のある子どもの多くが、読み書きに困難を抱えています。
授業の中で、どのような配慮や工夫ができるでしょうか。

読み書きは困難でも、聞くこと・話すことは得意な子も多くいます。とすれば、授業では、「聞く、話す」をしっかり集中させ、「読む、書く」に支援をしましょう。

一人一人の症状(困難)や、その表れ方が違うので具体的にはここでは書けませんが、以下のような支援ツールを取り入れている学校があります。
(支援ツールのページも参照してください)

 

 読みの支援

 

A 文字の拡大(基本中です)

B

スラッシュを入れる
C 蛍光ペンで大事なところに線を引かせる
D

読みやすいフォントを使う

Dyslexia用に開発されたアルファベットフォントなどもあります)

E 電子辞書を使う
(のちのちの自立学習につながります)
F カラーフィルター
(透明の色つきフィルターを載せると読みやすくなる場合があります)
G 読み上げソフト
PCで読む際に便利)
H DAISY
(教科書を読み上げてくれます。日本はマルチメディアデイジーで、非常に進んでいます)

 

 書きへの支援
A ICレコーダー
(最近は数千円と安価です。板書を気にすることなく集中でき、家で再生しながら復習できます)

B

テストを記入問題ではなく選択問題にする
C

電子辞書を使う

(のちのちの自立学習につながります)

D 音声認識ソフト、アプリ
DragonDictationなど優秀なアプリが続々と開発されています)
F パソコン入力(ノートテイキングの代わりに、ポメラやPCでノートを取ります)