■ディスレクシアとは

知的な遅れはないが、文字を読んだり書いたりすることが苦手な人たちのことを言います。学習障害という言葉を一度は耳にしたことがあると思いますが、ディスレクシアは学習障害の一種で、日本語では、失読症、難読症、識字障害、読字障害とも訳されます。ここで大切なことは、あくまで読み書きの障害であって、知的能力、理解能力、会話能力には特に大きな問題はないということです。もう少し解かりやすく説明すると、会話などのやりとりで言葉を理解する、つまり、言葉のキャッチボールは普通に出来るのに、文字を読んで言語を理解する時や文字を書いて言語を表現する時、つまり、学校現場等では、本やノートを道具で使うときにディスレクシアが表れる可能性があるということです。繰り返しますが、ディスレクシアはあくまで、読み書きに限定した障害です。


■ディスレクシアの特徴

では、ディスレクシアにはどのような特徴が見られるのでしょうか?ディスレクシアの特徴を知ってもらう前に、私たちが普段どのように文字や文、文章を理解しているかをもう少し詳しく説明する必要があります。それが識字プロセスです。識字プロセスの流れを簡単に図にすると以下の通りになります。

 

識字プロセスの流れ

私たちが文字や文、文章を理解する際、脳の中では、これだけのプロセスを瞬時に経ているわけです。話を元に戻すと、ディスレクシアを有する場合、この識字プロセスのどこかで、つまずいてしまうわけです。そのつまずいてしまうプロセスの場所により、ディスレクシアの特徴も変わることが考えられます。

 

 

(Ⅱ)の「視覚」の段階で困難があると・・・

この段階で困難があると、文字や文、文章を正しい形で捉える難しくなります。よって、以下のような特徴が見られると考えられます。

文字自体が二重に見える
文字の並びが歪んで見える
文字が反転して見える
書く文字が歪になる
似ている文字の違いがわからない(例:「は」と「ほ」)

これだけ説明されても、いま一つピンとこないかもしれません。では、実際に、ディスレクシアの人たちが、どのように文字や文章を見えているか、以下に例を示しますので、実際に読んでみてください。

 

(参考)

DINF 障害保健福祉研究情報システム『ディスレクシア』と『図書館』

http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/access/library/0903_tomonken/koyama.html

 

 

例1)滲んでみえる文章
例1)滲んでみえる文章
例2-鏡文字で映る文章
例2-鏡文字で映る文章
例3-かすんでみえる文章
例3-かすんでみえる文章
例4-点描画に見える文章
例4-点描画に見える文章
例5-ゆがんで見える文章
例5-ゆがんで見える文章

いかがでしょうか?もし読めたとしても、多かれ少なかれ時間がかかり、ストレスを感じたかと思います。ディスレクシアの人たちは、文や文章を読んだり、文字一つを捉えるにも、これだけのストレスを感じているのです。

そして、書く作業は、書く際に頭の中で文字の形を認知していなければならないため、書く作業が難しい場合は、この「視覚」の段階でつまずいている可能性が高いと考えられます。

 

 

(Ⅲ)の「音に変換する」の段階で問題があると・・・

この段階で問題があると、頭の中で文字と音を一致させることが難しくなります。例えば、ひらがなの「あ」という文字は、/a/の音、「い」という文字は、/i/の音と頭の中で一致させているわけです。よって、この段階に困難があると、以下のような特徴が見られると考えられます。

音読が難しい(読み方がたどたどしい)
勝手読み、飛ばし読みが多い
促音(小さい「っ」)
拗音(小さい「ぁ」など)や長音(「ゴール」の「-」)などが読めない
漢字が読めない

(Ⅳ)の理解・表出の段階で問題があると…

この段階で問題があると、音に変換した単語などを意味と一致させることが難しくなります。よって、以下のような特徴が見られると、考えられます。

・読解が難しい
・作文が苦手

識字プロセスの(Ⅱ)~(Ⅳ)は一連の流れであり、「視覚」の段階をクリアしないと「音の変換」は難しくなり、「音の変換」の段階をクリアしないと「理解・表出」は難しくなるわけです。上記の特徴以外にも、個々人によって様々な特徴があり、その原因も、他に聴覚記憶やワーキングメモリー、眼球運動などか関わっていると考えられます。   

ただし、上記の特徴は、一般的な言語学習上で経験することもあるので、上記の特徴が見られるから、必ずディスレクシアとは断定できません。例えば、「薔薇」を「ばら」、「憂鬱」を「ゆううつ」と読めることは出来ても、書くことは多くの方々が難しいと感じるのではないでしょうか。現在のところ、日本ではディスレクシアに関わる研究はあまり進んでなく、ディスレクシアの判定法も確立されていないので、ディスレクシアの特徴や困難と、一般的な学習で経験する困難の違いについての研究等も、今後更に必要とされています。

 

■関わり方・・・二次障害を防ぐために。

ディスレクシアに限らず、発達障害全般に言えることですが、ディスレクシアがあるにも関わらず、周囲がそれに気付かなかったり、不適切な指導などをしてしまうと、それによって自己評価の低下につながり、最終的に二次障害につながる可能性があります。

 

では二次障害が生じると、どのような影響が出てくるのでしょうか?心理的な面、行動的な面から見ていきましょう。

 

 

心理的な面での影響として

・本人の中では努力しているつもりでも、「ふざけている」「まじめにやらない」「ミスばかりする」と評価されることによって、自分に自信がなくなり「自分はダメな人間だ」などと自分を低く評価してしまうようになる。

・自己評価・自己肯定感の低下・欠如から、うつ病、ひきこもりや不登校になってしまう。 

学習意欲が低下・欠如してしまう。

・その他に、不安障害対人恐怖症気分障害なども発症してしまう。

 

行動的な面での影響として

反抗挑戦性障害になってしまう。これは、その名の通り、とにかく何にでも反抗し周囲に対して挑戦的・反抗的になります。本当は自分がして欲しいこと、自分の欲しいものでも拒否したり、反抗したりして周囲の人を困らせてしまいます。

 

行為障害になってしまう。これは、万引きや暴力など法律に触れることを行います。人や動物を傷つけたり虐待することもあります。一般的に言われる「非行」も、この行為障害、上記の反抗挑戦性障害と少なからず関連しているものと考えられます。

 

・成人期になり、PTSD(心的外傷後ストレス障害)やアルコール依存症、薬物中毒になってしまうことも考えられます。

 

 

最近では、DAISY(デジタル録音図書)などがディスレクシアの学習ツールとして有効であることがわかっていますが、日本ではまだ一部の人にしか使われておらず、今後更なる普及が望まれます。また、ディスレクシアへの適切な指導法として、音韻指導やビジョントレーニング、体性感覚と関連付けた学習も有効であるとされますが、日本では、こうした指導法についての実践的研究はまだ殆ど無く、指導法についても、今後更に研究が必要です。

しかし、適切な指導も大切ですが、それよりも、前述の通り、ディスレクシアの困難・つまずきに気付けるかどうかが問題だと思います。そもそも、そこに気付かなければ、適切な指導法にも結びつけることも出来ません。困難やつまずきに気付くことが出来れば、例え適切な指導法に結びつけることが難しくても、ディスレクシアの人の気持ちを理解し、心の面でのサポートが出来るはずです。それだけでもディスレクシアの人の心の負担が軽減し、二次障害を防ぐことに繋がると思います。その為には、まずは、何よりもディスレクシアについての知識を少しでも持つことが、教育者間にも求められていると思います。

 

 

(参考)

DINF 障害保健福祉研究情報システム『ディスレクシア』

http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/glossary/Dyslexia.html

 

DINF 障害保健福祉研究情報システム『ディスレクシア』と『図書館』

http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/access/library/0903_tomonken/koyama.html

 

得意・不得意から入る特別支援教育教材『読み書き障害の発達支援について』

http://www.e-kokoro.ne.jp/ss/tokui/data/pages/hattatsu/hattatsu-1-3.html

 

発達障害についてのまとめ『発達障害の対策不足で二次障害に。症状や具体的事例は?』

http://edu.markelog.net/%E7%99%BA%E9%81%94%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E7%99%BA%E9%81%94%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%81%AE%E5%AF%BE%E7%AD%96%E4%B8%8D%E8%B6%B3%E3%81%A7%E4%BA%8C%E6%AC%A1%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%81%AB%E3%80%82%E7%97%87%E7%8A%B6%E3%82%84%E5%85%B7%E4%BD%93%E7%9A%84/